中国でiPod touch5を盗まれ、警察に被害届を出したときのお話
2017/02/05
2013年初夏、中国広東省に滞在中の私は、不運にもiPod touch5を盗まれてしまいました。
チノパンのポケットに入れていたのをスられたのです。
中国の警察に被害届を出したので、その時の様子をここに残しておこうと思います。
やりとりを詳細に書いたので長文になりましたが、よろしければ御覧ください。
文中の会話は全て中国語でなされたものです。
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目次
中国の××派出所に被害届を出そうとしたら
一昨日、中国広東省のバス停で盗まれたiPod touch5の盗難被害届を出すことにした。
日本で保険を申請する際に盗難証明書が必要だからだ。
私の中国語力は、日常会話は問題ないものの、警察官とのやりとりができるまでかどうかはわからない。
日本語学科の学生にお願いして通訳をしてもらおうかとも思ったが、被害届を出すのに時間がかかると思い、迷惑をかけたくなかったので、一人で警察に行くことにした。
Google Mapsで最寄りの警察署を検索したところ、「××派出所」を見つけ、早速電話してみた。
「はい、××派出所。」男性の声だ。
「私△△大学の外国人講師ですが、一昨日~~でiPod touchを盗まれました。盗難証明書が必要なんですが、そちらで発行していただけますか。」
「110番通報はしたのか?」
「していません。」
「じゃあ、とりあえず派出所に来てくれ。」
「はい。そちらで盗難証明書はもらえるんですね?」
「ああ。まずは派出所に来てからだ。」
「わかりました。」
なにやら面倒臭がられている感が漂う電話対応だったが、中国ではこれくらいが普通だと思う。
午前10時半、××派出所に到着。
12畳ほどのスペースに制服姿の男性警察官が3人座っていた。
そのうちの一人が私を見て高圧的な態度で口を開いた。
「何の用だ?」
「iPod touchを盗まれた件で、先ほど電話した者ですが。」
「あぁ!? もっとでかい声で話せ。聞こえねーよ!」
(横柄な態度にイラッ、とくる感情を抑え……)
「私△△大学の外国人講師ですが、一昨日~~でiPod touchを盗まれ、盗難証明書が必要なんですが。」
「一昨日? 110番通報したのか?」
「していません。」
「あ?(手をひらひらさせながら)話にならないな。」
「私は盗難証明書が必要なだけです。ここで発行できるんですよね?」
「110番もしてないのに、被害に遭ったとどうやって信じればいいんだ?」
(何だこの対応は!?被害事実の証明??)
中国の警察に110番通報する
混乱しながら聞いてみた。
「じゃあ、いま110番すればいいんですか。」
「……まあ、そうだな。」
「わかりました……。」
(何で警察官が目の前にいるのに110番させられるんだ?)
と腑に落ちない感情を落ち着かせ、
××派出所から出て、携帯を取り出し110をプッシュした。
応答したのは若い女性の声。
「はい、**警察です。」
「一昨日、~~でiPod touchを盗まれました。」
「iPhone? 携帯電話ですか。
「いえ、iPhoneではなく、iPodです。携帯電話に似ていますが、携帯ではありません。音楽を聴いたり、インターネットをするものです。」
「……、Appleの製品ですよね?わかりました。では、~~の所轄から電話させます。いま使っている携帯電話はあなたのですか。」
「はい、そうです。」
「では、一旦電話を切ります。電話を待っていてください。」
その女性警察官はとても丁寧な対応だったので、心が軽くなった。
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被害現場管轄の派出所から電話が来る
待つこと3分。携帯が鳴った。
なまりがキツく、早口の男性警察官。
「○○派出所だ。どうしたんだ?説明してくれ。」
「私△△大学の外国人講師ですが、一昨日~~でiPod touchを盗まれました。盗難証明書が必要です。」
「名前は?」
「~~です。」
「あぁ!?」
「~~です。漢字は~~です。」
「z;slefjao;i*gasl*kdfnj*gas;gka:ojfg:a;klj!!!!!!!!」<強い訛り、早口で聞き取れず……>
「私は外国人です。もっとゆっくり話してもらえますか。」
「あぁ!? おめーは大学の先生だろ? 何で分かんねえんだ!?(舌打ちされる……) ったくよー」
「私は中国語の先生ではなく日本語の先生です。」(っつーか、君がなまってるから聞き取れないんだよ……)
「askldefhjeyurtioa;ewuirajklahsdr!!!!!!!!!! fjklasl;drfgo;eiarjfgal;ksdrhfl;aksjdfl;a!!!!!!」
<再び強い訛り、早口で聞き取れず……>
「すみません、もう一度お願いします。」(これ、なんかの罰ゲームか?)
「あぁ!?(舌打ちされる)大学の先生だろ!? とりあえず、○○派出所に来てくれ。」
「はい? 私はいま××派出所にいるんですが。」
「そこは被害現場の管轄じゃないんだよ。○○派出所に来い。」
「わかりました。○○派出所は××派出所から遠いんですか?」
「あぁ!?(舌打ちされ、ため息をつかれる)……、××派出所にいろ。迎えに行く。」
「わかりました。謝謝。」
ここ近年にないほど過酷な中国語のやりとりを終え、脳が熱くなり心身ともにクタクタだった。
××派出所の1階に再び戻り、不安を募らせながら迎えを待つ。
(どんな警官が来るんだろう。嫌だなあ、恐いなあ。)
中国のパトカーに乗る
待つこと10分。パトカーが、来た。
二人の中年警官が入ってきたところで、私が手を挙げる。
予想どおりのイカツイ顔だ。
「お前か!?」
「はい。」(なにその対応? 被疑者じゃないぞ)
「行こう。乗れ。お前、出身は?」
「日本人です。」(ドキドキ。中国で出身を明かすときはいつもハラハラする)
「あぁ!? 日本人か。」
高圧的、という表現がピタリと当てはまる方々に同行し、パトカーに乗せてもらった。
○○派出所に到着
パトカーで走ること3分。○○派出所に着いた。
××派出所よりもちょっと大きい。
1階ロビーには5人くらいの警官がいた。
ロビーで10分くらい待った所で、若い警官に手招きされ、取調室に連れて行かれた。
室内に入ると、まず使用年数不明の汚い椅子が目に入った。
椅子の上には座布団があるが、ボロボロで用をなしていない。というか、不潔なのでその上に座りたくない。
結局、私は本来なら被疑者が座るであろうその椅子に座らされ、若い警官はパソコンのキーボードを打ち始めた。
幸いにことに、彼の中国語は訛りもなく聴き取りやすい。
更に良いことに、穏やかな口調だった。
若い警官から事情聴取を受ける
「身分証ある?」
「はい。」<パスポートと大学の名刺を差し出す>
「学歴は?」
「~~です。」
「所属する党は?」
「はい? 党って何ですか?」
「共産党にもいろいろあるだろ。」
「いやいや、私は日本人だし、党には入っていませんよ。」
(共産党員であること前提の話の進め方やめてくれる?(笑)
「盗まれたのは携帯だっけ?」
「携帯に見えるけど違います。iPod touchは音楽を聴くためのものですが、インターネットもできます。」(この説明も何回目だろう……)
戸惑いの表情をされる。
「……じゃあ、タブレット型パソコンか?」
「まあ、機能は同じですね。」
「被害はいつ、どこで?」
「一昨日、~~でです。」
「なぜすぐに110番しなかった?」
「通報してもiPodが戻ってこないと思ったからです。
でも、日本の保険会社に『盗難証明書が必要だ』と言われたので、今日警察に来たんです。」
「iPodの購入証明は持ってるか?」
<証明書を渡す>
「盗まれたときの詳細を話してくれ。」
<説明する。その後、質問され答えること数回>
事務的なやりとりだった。
その警官は高圧的な態度をとらない。
愛想が良いことはないが、悪いこともない。
警官が一旦取調室を出て、印刷された調書を持って入ってきた。調書を私に手渡す。
「この内容に間違いがないか確認してくれ。」
私は一読した後、間違いを一箇所指摘し訂正してもらった。
「ここと、ここにサインしろ。その下に日付を書け。サインの真ん中に母音を押せ」
これで調書が完成したらしい。
待合室に戻ろうとすると、その警官からティッシュペーパーを渡された。
朱肉で汚れた指を拭け、ということらしい。こんな気配りができるのか、とちょっと驚いた。
実況見分・現場検証?
数分後、同じ警察官がコンパクトデジカメを持って来た。
「現場の写真撮影に行くぞ。来い。」
二人で再びパトカーに乗り、被害現場のバス停へ移動した。
突然パトカーで警察官と私が登場したので、バス停は微妙な空気に包まれた。
「現場はどこだ?」
「あそこです」と指し示す。
「そこに立て」
人々は顔をしかめて汚らしい物を見るような視線で私をチラチラ見ている。
「オレは被害者だ」
と声を大にして言いたかったが、それをこらえ、仁王立ちしてカメラのレンズをみつめた。
そこで写真を2枚、異なるアングルで撮られた。
「よし、派出所に戻るぞ」
(!? これで現場検証終わり? 実況見分とかは??)
再び○○派出所の取調室、書類に署名
警官が、現場で撮った写真をA4の普通紙に印刷して持ってきた。
私は、その紙の下に、盗まれた時間、場所、物を書き込み、それに間違いがないという旨の説明を中国語で書き、署名した。
被害届の手続きがひと通り終わったようだったので、待合室に戻り椅子に座ろうとしたところ、中年警官に
「帰っていいぞ」と言われた。
「まだ盗難証明書をもらってませんが」
「月曜日に来い」
「……わかりました」
○○派出所を出たのは昼12時半だった。
同日夜8時半頃に警察から連絡
携帯電話がなった。見知らぬ番号だ。
「もしもし。」
「○○派出所です。」
「あ、ニーハオ。」
「お前が欲しいのは損失証明書でいいのか?」
「はい?損失証明書?盗難証明書ではないんですか?」
「こちらで用意できるのは損失証明書だ。」
「……わかりました。では、損失証明書をください。」
「いま、取りに来れるか?」
「もう夜なので、明日でもいいですか?」
「いいぞ。いま、どこにいるんだ?」
「~~大学です。」
「じゃあ、~~大学まで持って行こうか?」
「え?いいんですか? お願いします。」
「わかった。じゃあ、着く前にもう一度電話する。」
(マジでか! ラッキー)
30分後、再び携帯が鳴った。
「もうすぐ○○大学に着くから、正門で待ってろ。」
「わかりました。謝謝。」
大学の正門で待っていると、中年の警官二人が乗ったパトカーが停車した。
気さくな感じの警官だ。
中国警察の態度が紳士的に変化
助手席の窓が開き、警官が書類を渡してくれた。
「この事件については、いま捜査中だ。とりあえず、損失証明書を用意したから確認してくれ。」
<手渡されてた書類を確認し>
「はい、これでけっこうです。」と答えた。
「もし、他に必要なことや、証明書などがあれば○○派出所に連絡してくれ。こちらで用意するから。」
「わかりました。親切にしてくれてありがとうございます。」
当初の乱雑な対応から一変して、不気味なほど紳士的な対応だった。
(突然なんなんだ? もしかして外国人の事案ということで、上の方から「丁寧に対応しろ」と指示されたのかな)
理由はともかく、丁寧な対応はとても気分がいい。
中国警察ツンデレの流れ
××派出所の粗末な対応に腹が立ち、
110番受理の女性警察官の丁寧さに一瞬だけホッとした後、
○○派出所の高圧的な電話対応に怒りが沸点に達した。
しかし、○○派出所に着いてから応対してくれた若い警察官の態度がまあまあよかったので気持ちが少し落ち着いた。
最後の最後に損失証明書をわざわざ大学まで届けてくれるとは思わなかった。
それから、iPod touchは中国では普及していないということがわかった。
iPhoneとの違いを何度説明したかな。
以上で終わりです。
こんな思いはもう二度としたくないです。
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