中国大使館、学位記の領事認証。アポスティーユではなく公印確認が必要
2018/12/02
中国の大学で講師として就職したり、中国駐在員として働く場合、就労ビザ(Zビザ)を取得しなければなりません。
中国への招聘手続きは基本的に職場のスタッフがやってくれるのですが、日本で自分でそろえなければならない書類もたくさんあります。
その中で一番面倒だった書類が、中国大使館・領事館でやってもらう学位記の領事認証です。
厳密に言うと、学位記自体の領事認証ではないのですが、ちょっと複雑なのでこの記事の中で説明していきたいと思います。
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目次
中国政府から学位記認証の要求をされる
中国の就職先から以下のようなメールがきました。
「最終学歴の学位記の認証を駐日中国大使館でしてもらい、その書類をスキャンして電子ファイルを送ってください」
中国政府外専局が私の中国の職場に「私の学位記の認証」の提出を要求してきたらしいです。
このメールを見たとき、
(私の学位記がニセモノだと疑われているのか?)
とちょっと気分が悪くなりました。
すでに職場の要求どおり、学位記をスキャンして提出していたからです。
(そもそも、学位の認証って何?)
意味がわかりません。
学位をとったことを証明するために学位記があり、大学院の課程を修了したことを証明するために修了証明書というものがあり、大学が発行し証明してくれているので
(それで学歴の証明になるだろう)
と思うのですが、
「中国政府外専局が学位記の領事認証を要求している」
の一点張りで、話になりません。
(はは~ん、これはまた後で「やはり必要ありません。送らなくていいです」というメールが来るパターンだな)
と予想して3日間静観していたところ、
「学位記の認証は何日くらいでとれますか」
というメールが中国の就職先からきました。
(これはどうやら本当に必要らしい)
ということで、自分で調べ始めました。
学位記の認証はできない
駐日中国大使館のホームページを見ても曖昧な部分が多かったので、直接電話して確認してみました。そして、領事認証について教えてもらったこと。
「大使館・領事館では大学の学位記そのものの認証はできません。」
これには驚きました。
公的機関が大学の学位記を
「本物です」
と太鼓判を押してくれると思っていたので。
では、どうすればいいのか?
中国大使館のスタッフはさらにこう続けました。
「大使館・領事館は、日本政府外務省の公文書を認証できるだけです。外務省に聞いてみてください」
中国の職場からは、中国大使館の学位記認証をもらうように指示されたのですが、話がおかしな方向へ進み始めました。
【結論】中国大使館は学位記の認証はしてくれないが、公文書の認証はしてくれる。
アポスティーユと公印確認の違い
私が最初に戸惑ったのが、アポスティーユと公印確認の違いでした。
これを理解していないとどちらを申請取得すればよいのか分かりません。
アポスティーユ
「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことです。提出先国はハーグ条約締約国のみです。公印確認
日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事による認証(=領事認証)を取得するために事前に必要となる外務省の証明のことです。出典:外務省ホームページ
中国の場合はハーグ条約を締結してないため、私たちはアポスティーユをとることはできず、公印確認を申請することになります。
領事認証を受けるまでの流れ4つ
外務省のホームページを調べた結果、領事認証を受けるまでにはいくつかのステップを踏む必要があることが分かりました。
そして、確かに「学位記の認証」というのはないようです。正しくは、学位記に関する書類(私文書)を作ってもらい、それを公文書にしてもらい、さらにそれを領事認証してもらうということです。
中国の職場のスタッフはこのあたりの詳細な事情を知らないために、
「学位記を領事認証してもらって」
と私に伝えたのでしょう。
文字通りに受け止めたせいで少々混乱してしまいました。
出典:外務省のホームページ
4つの機関
領事認証を入手するまでには4つの機関を経る必要がある。
- 公証役場で認証をもらう
ここでも学位記が本物だという認証はできません。
公証人には学位記の真贋を見極める能力も権利もないからです。
結局のところ、私本人が「この学位記は本物ですよ」と公証人の前で宣言して、その旨の書類を公証人が作ります。その書類が公文書になります。
※公証人が学位記のコピーをとり、それを使って書類作成。学位記原本は持ち帰る。 - 法務局で1の公証人押印証明をしてもらう
- 外務省で2の公印確認をしてもらう
- 駐日中国大使館・領事館で3の認証をしてもらう
①公証役場で認証
申請の方法
窓口での申請、郵送での申請、ともに可。
即日発行。
手数料5,500円。
※東京都、神奈川県、大阪府に在住の場合
東京都、神奈川県、大阪府に在住の方は、公証役場で申請すれば領事認証までとってもらえる。地方との行政サービスに格差がありますね。
東京都,神奈川県及び大阪府の公証役場では,申請者からの要請があれば,公証人の認証,法務局の公証人押印証明及び外務省の公印確認またはアポスティーユを一度に取得できます。
このサービスをご利用になると法務局や外務省に出向く必要はありません。
ただし,公印確認の場合は,駐日大使館・(総)領事館の領事認証を必ず取得する必要がありますので,ご注意ください。
参照:外務省のホームページ
②法務局で公証人押印証明
窓口での申請、郵送での申請、ともに可。
即日発行。
郵送での受け取り可。
発行手数料は無料。
③外務省で公印確認
申請の方法
窓口での申請、郵送での申請、ともに可。
窓口での申請の場合、2~3日。
郵送での申請の場合、10日~14日間かかる。
窓口で申請し、郵送で受け取ることもできる。
ただし、郵送で申請し、窓口で受け取ることはできない。
申請費用:無料。
※私の場合、レターパックを使ったのですが、郵送で申請してから一週間後に外務省からの郵便を受け取りました。
予想よりかなり早くて驚きました。
しかも間に土日をはさんでいます。
④中国大使館・領事館で公証認証
長いステップを経て、やっと領事認証を申請する段階まで来ました。
申請の方法
窓口での申請のみ可。郵送での申請はできません。
私を含め地方出身者には辛い制約です。
中国大使館・領事館に直接行けない人のほうが多いと思います。
ただし、委任状を書けば、知人友人や行政書士を代理人として窓口申請してもらうことができます。
中国大使館は東京にありますが、領事館は大阪、福岡、札幌、長崎、名古屋、新潟にあります。
自分の居住地の管轄に申請する必要があります。
例えば、青森県に住所がある人は中国大使館ではなく、札幌総領事館に申請しなければなりません。
申請に必要なもの
- 外務省で公印確認を受けた公文書の原本とコピー
- 申請者の身分証とそのコピー
- 代理人が申請する場合は、代理人の身分証とそのコピーが必要で、依頼者は身分証のコピーだけでよい。
- 代理人が申請する場合は、委任状
- 申請費用として3000円
郵送で受け取る場合は代金引換なので、申請時に郵送費を用意する必要はない。
(受け取りは窓口と郵送のどちらかを選べる)
本当に面倒で余計な仕事を増やしてくれたなあ、というのが率直な感想です。時間とお金の無駄。
学位記の領事認証、何のためにやるのか分かりませんが、
(中国では学位記の偽造事件が多いのかな)
と予想しています。
書類を用意しろと言われれば用意するしかないですね。Zビザを取得するためですから。
以上、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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